昔のおれはブルーハワイの青がきらきらと眩しくて
ただただはしゃいでいてそれは俺にとって夏の色で

夏の色で





恋はくせもの





高崎舌だして、と言われたから出してやった。あかんべえするみたい。
途端に顰められる向かいの顔に満足してほくそ笑む。
「やっぱりいやだな。青なんて」
手にはプラスチックのカップ。細かくきれいに、とまではいかないけれど、削りだされた氷の粒の山に色とりどりのシロップがかけられる氷菓は日本の夏の定番。
そして、
「夏って言ったら、ハワイだな!」
「高崎はそうだろうね」
カップの氷は真っ青に染まって、もうほとんど液体だ。さくさくと宇都宮の手の中ではまだ氷が砕ける音がする。白い氷がじわりじわりと俺のと対照的な赤色に変わってく。 「舌の色が変わるほうが面白いだろ」
「気持ち悪いだけだよ青とか緑なんて。味はほんとは違わないんだから」
違わないなんて言うな。俺、イチゴの甘さも結構すきだぜ。
かき氷って聞いたら真っ先に思い浮かぶのはイチゴの赤の鮮やかさ。それから手に持つ宇都宮。



昔、夏には甘味処、ふたりで行ったよな。今は少なくなったけど。いつも行っていた店で選ぶ味はいつもイチゴとブルーハワイで、それは変わらなくて、変わったのは舌の色だけで、それを笑いながら見せっこした。 窓の外の太陽の光がガラスの器に入ってきらきらして、添えられた銀のスプーンもとても眩しくて、まるで夏のたからものみたいだったのを覚えている。


カップの氷が溶けてほんとに南国の海みたいだ。光が写ってゆらゆら揺れて、誘われてるみたいで一気に飲み干した。

「イチゴも色つくけどね」

さくさくと口に運んでいた宇都宮がふいに言う。見遣れば口を開けて舌を出した。濃い赤に染まっているのが見えた。少しだけ。
『大して変わんないな、俺のほうがすげーだろ!』

そういって笑ったのは昔のことだ。そして今も


そういって 笑い飛ばすつもりだったのだ




「…………っ、」
「………?高崎、顔、変だけど…」

「どうかした、」
「ごみ!ごみすててくる!!!」




「…顔が赤かったのは、」
「言及すべきかな?」








駆け出した俺の顔は熱くて耳まで赤く染まっていたと思うので
それを見られたくないので
そしてそれに気づいてほしくないので
でもお前はすぐに俺をわかってしまうので
だから駆け出したわけで
そういうことするというのは俺のわけのわからない癖のようなもので
わかってると思うけど見逃してほしい








まったく全然気づいてほしいなんてこれっぽっちも思ってないんだ!








昔のおれはブルーハワイの青にただただはしゃいでいてそれは夏の色で
昔のおまえのイチゴの赤より強烈な色が残ることを誇らしげに思っていたのに
むしろちょっと赤くなっただけだろなんて笑っていたのに








ああ、あの赤い舌でキスされたいなんて考えてしまうとは!!







いつから、なんてそれこそ昔だ
そんなこと覚えてない ああ、もう!





恋は


くせもの!!











20090726