「言えない…」

あの日から今日までがんばってみたけれど。
お前に宛てた、好きだ、というたった3文字の言葉が、どうしても言えない。


そういう空気になったら言おうと思った。
そういうときじゃないとだめだと思った。
だって俺はいつも流されてしまうから。

でも、ちゃんと伝えたいんだ。
なんでおまえのキスがもうずっと、ずっと前からあんなに気持ちいいのか。
なんでおまえが足りない、だなんて思ったりするのか。
なんでおまえじゃなきゃだめだっておもうのか。

今まで俺、お前に言ったことあったかな。いいやない。そんなこと思いもしなかった。
だから言いたいんだ。真っ先におまえに。


たぶん、宇都宮はわかってる。俺が何か言おうとしてること。
わかってて言わせないようにしているということに、俺はこの一週間かけて気付いた。
自分は鈍いと思っていたけど、まさかこれほどまでだなんて。
時間がない。この日までに伝えようとおもっていたのに。
言わせない理由なんて考えない。マイナススパイラルに陥るのが目に見えている。


だめなんだよ宇都宮。だって俺は気付いてしまった。自分の気持ちに。
おまえがおれにくれるものに、意味が欲しくなってしまった。



悔しいけど。なんでそんなやつなんだ、って思うけど。
ごちゃごちゃして気持ち悪い胸の中がすとんと落ち着くように
納得できてしまったんだ。


ずっとずっと 隣にいて
それが当たり前で
たくさんのいろんなものを見て 聴いて 感じて

そうやって俺たちが一緒に走ってきた 長い、長い時間



その始まりの日に、必ず。









20090727